新型コロナ関連融資の返済時期・返済原資を今から考える(事務所通信より)
新型コロナウィルスの新規感染者数は8月以降低下傾向にあり徐々に落ち着きを取り戻してきています。経済的にも2020年4月~6月のGDPが年率換算27.8%と戦後最悪の減少となったのに対して、2020年7月~9月は、日経新聞が民間アナリスト22人に確認したところ平均で前期比年率13.3%増の回復と予想されています。
冬に再流行の可能性があるなど引続き予断を許さない状況ですが、皆様の会社においても緊急事態宣言が発令されていた4月、5月に比べると比較的状況が落ち着いてきているのではないかと思います。
新型コロナ関連融資の返済は、据え置き期間が最長5年となるため、すぐに返済が始まるわけではありませんが、落ち着いて検討できる今だからこそコロナショックで増加した借入金の返済を考えるにはよいタイミングだと思います。
① 現状を整理する
返済を計画するためにはまず借入ごとの情報を整理することから始めてみましょう。借入ごとに「借入金額」、「借入期間」、「返済条件」などの情報を整理しましょう。なお、既存の借入金がある場合は、新型コロナ関連融資を活用し、借換えやリスケジュール(借入条件の変更)で、毎月の返済負担を減らすことを検討しましょう。
② 返済シュミレーションを実施する
次に整理した借入金の情報に基づいて返済予定額を計算してみましょう。これにより借入金の返済のために売上や利益がどの程度必要かを確認することができます。
③ 返済原資を考える
最後に、今から新型コロナ関連融資の返済財源をどのように確保するかを検討しましょう。返済財源の確保には時間が必要となることがあるため、余裕がある今のタイミングで検討することが有効です。
「収入」-「支出」=「収支」ですので、資金繰り(収支)を改善するためには、1.収入を増やす、2.支出を減らすことが考えられます。
現在のような厳しい環境下では、売上を増やすことは容易ではないため、ここでは、それ以外の収支改善方法をご紹介したいと思います。
1. 経費を削減する
ごく稀に採算管理を厳しく行い無駄な経費がほとんどない会社もありますが、無駄な経費が気づかずに放置されている会社は、意外と多くあります。特に家賃、保険料、オフィス清掃、各種リース、新聞購読、雑誌購読、通信費などの固定費については、契約当初は内容を吟味し、契約を行ったものでも、時間の経過によって割高になったり、不要となったりしていることが多く見受けられます。そのため、これを機会にこれらの固定費について見直してみるのがよいと思います。なお、できるだけ少ない労力で、大きな効果を得るために損益計算書で多額に発生している項目から順番に見直しを行うことをおすすめします。また、経費の見直しだけにとどまらず、在庫数量の削減を行うことも収支の改善に貢献します。
2. 不採算部門の撤退を検討する
中小企業の場合、複数の事業を行っていても、部門別損益まで計算しているケースは多くありません。このような会社では、知らず知らずのうちに不採算事業を抱え込んでしまっているケースがあります。そのため、複数の事業を実施している場合には、売上高だけでなく、費用についても部門別で計算して、部門別損益を把握するようにしましょう。
その結果、不採算の事業が明らかとなった場合には、事業を撤退するかどうか、撤退しない場合には、事業の拡大により採算の改善を図るのか、それもとも事業の縮小により採算の改善を図るのかの意思決定を行うことが必要となります。
3. 遊休資産や不要な有価証券の売却を検討する
使用していない土地などの遊休資産や取引関係上必要のない有価証券などの資産の売却によって返済原資をねん出できないかも検討してみましょう。遊休資産等の売却により借入金が大幅に減少すると、月々の返済額が少なくなり、資金繰りが大幅に改善する可能性があります。
自社だけで、返済計画の立案が困難な場合には、国の制度を利用して専門家のサポートを受けることが可能となっています(https://www.nagoya-cci.or.jp/keiei/sodan_kaizen.html?cid=2)。まずは、少し落ち着きを取り戻してきた今のタイミングで、将来の返済が可能かどうかを検討してみてはいかがでしょうか。